引用 江戸の温泉学  松田忠徳著

 

第224頁 10行目から第225頁6行目において、新憲法制定第二回国会での

厚生大臣の温泉法案提案理由を引用されている。

「わが国は世界に冠たる温泉国でありまして、古来温泉は国民の保養又療養に広く利用されてまいったものでありますが

、温泉地の発達に伴い、あるいは乱掘の結果、水位が下がって、湧出量が減退又は枯渇するとか、あるいは温泉に関する

権利関係が複雑を極め各種の紛争を起こす等いろいろの問題が出てまいったのであります。 これらの問題を処理いたす為、

従来都道府県令を持って温泉に対する取締りを行ってまいったのでありますが、新憲法の施行により昨年末、これ等の府県令は

その効力を失ったのであります。 然しながら、温泉は我が国の天然の資源として極めて重要なものでありまして、これを

保護すると共に、その利用の適正を図り、一面、国民の保健と療養に資すると同時に、他面その国際的利用による

外貨の獲得に役立てます事は国家再建上、喫緊の要務と存じますので、この際、従来の都道府県令の内容とするところを

基礎としてこれを若干拡大解釈いたしまして温泉保護とその利用の適正化に遺憾なきを期するためこの法律案を

提出した次第であります。」

 

以下は著者、松田忠徳氏のご意見

「温泉法」が施行された初めて温泉が日本人の間に普及したわけではない。

文献に記されているだけでも1300年前の奈良時代から、日本人は温泉と深い係わりを持ってきた。

”鉱泉”と”温泉”の区別が一般的に未だつかないのは、非科学的な「温泉法」が原因である事は明白であろう。

日本人の温泉の歴史的、歴史的な深い係わりの中に、法律が突然介入しただけである。

温泉は暖かい泉である。

”鉱泉”が温泉と冷泉に分類される事は誰しも納得がいく。

ところが”温泉”が冷鉱泉や高温泉に分類されるとなると違和感を覚える人は少なくない。

レジャー温泉、つまり濃厚な鉱物質を含まなくても25度以上の地下水を温泉と称させる為に生じた

大いなる矛盾なのである。